地域活性化しんきん運動・優秀賞
伊達信用金庫(北海道) ICTを活用した地域農業支援
伊達信用金庫では、地域の主要産業である農業の活性化と農業者の所得向上を目指して、2017年「地域農業を考える会」を発足した。2019年に日本財団「わがまち基金」の採択を得て、ICT(情報通信技術)機器を実証試験に協力いただいた農業者3件に無償で貸与。JA以外の取路拡大と地域ブランディングのために、農産物の品質基準である「GAP認証」の取得を目的として活動後、2021年からは、農業技術士を招聘して生産技術の向上による収量と品質の向上を目指すことを企図した。実証試験では、ビニールハウス内における温度、湿度、光合成に必要な二酸化炭素を、コンピューターで制御するICT農業を、従来までのハウス栽培と比較する形で行い、おおむね1.2倍から1.9倍の収量を生産した。さらに、ベテラン農業者と比較して、就農して間もない農業者が行うICT農業と収量・品質の面で大差ない結果が得られ、これまでの「勘」と「経験」による農業からの脱却への一歩となることも実証された。
この結果をまとめ、2022年10月に当金庫アグリベーシックセミナーで報告、日本銀行金融高度化センター「第5回地域活性化ワークショップ」で地域農業活性化への取り組みとして報告した。11月、北海道の各地から関係者60人を集め報告会を開催した。2023年12月、日本政策金融公庫から講師を招き農業に関する勉強会を職員向けに開催した。また地方自治体や信用金庫などの視察要望に応え、累計視察者(団体・行政等)は延べ12団体120人を受け入れた(2022年12月末現在)。
2023年度は4件の農業者がICT農業へ参加。地元自治体(北海道伊達市)が行う農業研修センターでの営農検証事業を委託者とともに実証し、経済性の検証と試験栽培による栽培手法や品種の優劣が明確となった。
一次産業の活性化と関係人口の増加(新規就農者を含む)に貢献する本活動は、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局/内閣府地方創生推進室より地方創生に資する金融機関等の「特徴的な取組事例」として選定され、地方創生担当大臣から表彰を受けた。
-
2023年11月、当金庫が推進する環境制御技術を導入した伊達市の
関内(せきない)農業研修センターでアグリベーシックセミナーを開催
大阪信用金庫(大阪府) 外国人材と共生する社会の実現に向けて
大阪府(以下「府」)では約2万3千の事業所で約12万人の外国人労働者が働いており、生活習慣などの違いから職場になじめず失踪するなど社会問題が起きている。外国人労働者のうち4割(約4万8千人)がベトナムから来日しているとの現状から、大阪信用金庫では、2019年4月に中国語と英語が堪能なベトナム人留学生2人を正職員として雇用し、取引先企業へのサポートを開始した。
2人の強みは、「外国人求職者へのキャリアコンサルティング」であった。
ベトナム人留学生が多く在籍する大学・専門学校を訪問し、取引先企業の求人内容を母国語で丁寧に説明。留学生の希望を聞きつつ、自身の経験談を交えながら両者をマッチングする役割を担った。当金庫は2019年9月に合同企業説明会(出展企業:31社、外国人留学生:150人参加。7社が7人を採用)、2023年8月にベトナムの首都ハノイで、日本で就職を希望する高度人材との採用面接会(取引先企業13社が参加。6社が13人を採用)も開催。
また取引先企業の外国人従業員同士の交流を図り、日本文化に触れ理解を深めるため、サークル「だいしんO-M usubiクラブ」も設立した。会員は51人(2024年3月現在)。日本で充実した生活を送れるよう日本文化を体験し学ぶイベントを開催している。
当金庫採用のベトナム人2人の日本で働くことに対する熱い思い、明るい人柄、聡明さにも助けられ、企業側も労働者側も良好な関係を継続できるようになった。2024年3月までの実績について、採用者数は33人、企業訪問先数は延べ122社となっている。
また当金庫は2021年、信金中央金庫「SCBふるさと応援団」に府の「グローバル人材育成による地域創生事業」を推薦し、府に1千万円を寄付した。
これまでの活動を通じて、外国人材と共生する社会実現のため、当金庫は取引先企業に外国人活用の提案、マッチング、就労定着支援を行い、また外国人従業員に日本で充実した生活を送るための支援を行ってきた。これらの活動は、双方にとって、ひいてはベトナムと日本の両国にとって、さらには国際社会にとっての貢献につながるものと考える。
-
ベトナム人職員が外国人材就労定着として外国人従業員がいる取引先を訪問。
雇用主と従業員の間でコミュニケーションが円滑になるように支援し、
良好な関係ができるように取り組んでいる。